ウォーミングアップのやり方は?
どうも、アベケンです。
EMUメンバーとの会話の中でミートアップ前のウォーミングアップに関して話題が上がりましたので、今回はミートアップやレース前のウォーミングアップに関して、現在勉強中の運動生理学方面から考察してみたいと思います。
酸素摂取量の増加を促す
人は呼吸によって酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出しているわけですが、身体に取り込まれた酸素は主に体内でエネルギーを生み出す為に使用されます。
身体を構成する細胞の中には酸素を利用してエネルギーを生み出す機能が備わっています(ミトコンドリアと呼ばれています)。運動をすると体内の酸素需要は増えますが、運動強度が高くなればなるほどよりたくさんの酸素が必要になります。
ところが運動を始めた途端にこのミトコンドリア達が多量のエネルギーを供給できるわけではありません。酸素を使ったエネルギー供給は複雑な過程を経て行われるため、多量のエネルギーを供給することができる代わりに供給速度が遅いという特徴があります。
そのため、身体の酸素摂取量は運動を始めてからジワジワと上昇していきます。
ミートアップを思い出して頂くとわかると思いますが、8分後のリアルスタート直後の強度はかなり高く、そんな時にまだ酸素摂取量がジワジワ上昇している状態だと、酸素を使ったエネルギー供給が追いつかず、代わりに酸素を使わないエネルギー機構がフル活動します。
「あの強度はそれでなくても無酸素やろ…」
というボヤきが聞こえてきそうですが…(笑)
仰るとおり、確かにスタートダッシュの強度はほぼ無酸素強度。要するに酸素を使ったエネルギー産生が間に合わないので、身体は代わりに酸素を使わない方法でエネルギーを供給します。
酸素を使わないエネルギー供給方法はグルコースやグリコーゲンと呼ばれる糖質由来の物質を使っています。こちらは供給スピードが早いのですが、エネルギー産生量が少ないという特徴があります。
少し話が逸れたので元に戻しますが、リアルスタート直後のダッシュ強度は確かに無酸素です。ですが、どんな運動強度であれ、身体は全てのエネルギー供給システムを使ってエネルギーを供給しています。割合が違うだけで、無酸素強度の運動でも30-40%は有酸素機構からエネルギーが供給されているとされています。
そのため、この時に有酸素機構がフルに稼働できる状態にしておかないと、身体は無酸素機構からより多くエネルギーを供給しようとします。
無酸素機構はグルコースやグリコーゲンからエネルギーを産生しますが、身体に貯蔵されているグルコースやグリコーゲンの量には限りがあり、酸素のように空気中から供給されないため使えば使うほど無くなります。ミートアップのような短時間であれば枯渇するようなことはありませんが、これが長時間のレースとなると後々スプリントやアタック等の可否に関わってきます。
なので、「レース開始時に有酸素機構を100%使える状態にしておく」というのが運動生理学から見たウォーミングアップの意味になると考えます。
PAP(Post Activation Potentiation)
これは西園さんの記事にも記述がありました。
また、こちらでも詳しく解説されています。
噛み砕いて言うと
「あらかじめ強い刺激を入れておくとその3-10分後パフォーマンスが上がるよ!でも長続きしないよ!」
というものです。生理学的には
・神経発火の活性化
・筋のミオシン軽鎖のリン酸化
・筋収縮に必要なカルシウムイオンの感受性アップ
という事象が起こっていますが、小難しいことは割愛します。
ミートアップに例えると、スタートしてから8分後にリアルスタートが始まり、直後は高強度になります。この高強度ダッシュについていくために、あらかじめ30秒程度の高強度ダッシュを何本かやっておくことでPAP適応が起こります。ただ、この適応は長続きせず効果は短時間です。なので、
スタートダッシュで目立ちたい!
先頭集団についていきたい!
と考えている人は、PAPの効果を狙ってウォーミングアップにダッシュを何本か入れておくといいかもしれません。
運動生理学から見たウォーミングアップ
上記から運動生理学から見たウォーミングのやり方としては
・酸素摂取量をあらかじめ上げておくために、10-15分程度、低-中強度でペダルを回して心拍数を上げておく。
・PAPの適応を起こすためにミートアップJOIN直前くらいに30秒程度の短い高強度ダッシュを何本かやっておく。
といった内容になるかと思います。
生理学以外のウォーミングアップの効果
他にもウォーミングアップの目的はあります。
・心理的側面
これから始まるレースに向けての精神的な準備、レース内容のイメージを高めたり、自分の動きの確認、展開予想、目標を定める、ルーティーン…そういった「心の準備」を行う時間も兼ねています。
・血流・体温を上げておく
身体が冷えた状態からいきなり高強度の運動を行うと、ケガのリスクを高めたりします。ただし、温めすぎてもパフォーマンスは落ちるのでこちらは適度にという感じでしょうか。
・アイテムを取っておく(zwiftに限る)
エアロヘルメット来いっ!…ドラフティングブーストかよ…。
ウォーミングアップに正解はない
上記でウォーミングアップ中に行う要素的な事を説明しました。
では具体的にウォーミングアップはどのように、どれくらいやればいいのでしょうか?
これは見出しにも書いた通り、正解はありません。
人によって身体の反応も変われば性別、性格、メンタル、競技年数…全てが変わります。以前、EMUを主催しているえーぞうさんがウォーミングアップに関するインタビュー記事を書いているのでこちらも参考になりかもしれません。
最初は誰かのウォーミングアップのやり方を真似してみて、その後自分用にカスタマイズするのも面白いかもしれません。
Ride ON‼
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※編集後記※
このEMUブログの他にも私個人でブログ書いてたりもするので、こちらにも遊びに来てみてください(宣伝)
主に筋トレと自転車に関する考察記事、後はトレーニングに関する考え方的な記事が多いです。