「ギア一枚分軽くなる」を大真面目に検証してみた結果。
「レビュー」
それは現代において恐らくは最も多く書かれているであろう文章の一つである。
そして、それはときとして文学作品へ昇華する。
Amazonでは、レビュアーという名のアーティストたちが日々その作品を投稿し、そのレビューに対して大衆がSNSで賛辞を送るという文化活動が繰り返されている。
レビューという芸術において、切っても切れないジャンルといえばもちろんオーディオの世界だ。
オーディオに対するレビューは、あまりの詩的表現からポエムと賞されることがある。
商品を購入する指針としてではなく、一種の詩や随筆として楽しめるような次元に昇華したレビューは読者の想像を掻き立て、結果としてマニア心をくすぐることで購入を後押しする。
私ことarkstrongは、こういった味わい深いレビューが大好きで、もうなんていうか、レビューに対してレビューしたいと思ってしまうくらいなのだが、そんなこと言ってるから、好かれる理由が「変人」になるのだろう。
そんなことはどうでもいい。
我らEMUの大好物、ロードバイクのパーツレビューにも、昔からそういった曖昧な表現は散見される。
例えば、剛性が高いパーツについて、脚が売り切れるという表現が見られるが、脚はそもそも販売していないので売り切れないし、安価で重いパーツなどには全然進まないというと酷評もよく見るが、実際のところ絶対に進んでいる。
その中で、そんなことはあり得ないともっぱら揶揄されているのが、「ギア一枚分軽くなる」という表現だ。
え、パーツ変えるだけでそんなに変わるの!?
と、飛びついてしまいがちな表現だが、実際この表現は定量的に見えてそうではなく、限りなく感覚論なので、人によってはこんな表現を使うレビュアーは信用しないという指針にすらなるほどである。
最近では、一周回って一種のジョークとして扱われるほどに使い古されたこのワードだが、実際のところ、「ギア一枚分軽くなる」ほどの効果ってどんなものなのか?
前々から気になっていたこの検証を今回やってみようと思う。
検証に入る前に、そもそも「ギア一枚分軽くなる」って何なのか?
その定義を考えなければなるまい。
ギアとは、ここではリアスプロケットを指す言葉と考える。
さらに一枚分とは?
これが問題で、ギア一"段"のことなのか、"ギア歯一枚"のことなのかが微妙だ。
決めの問題なので、今回は「ギア一枚」としての効果が少ない「ギア歯一枚」と定義することにする。
次に軽くなるとは?
これは踏んだ感じが軽くなるということだろうから、噛み砕くと、パーツ交換前と同じトルクで同じケイデンスが踏めるということになるだろう。
つまり、
「ギア一枚分軽くなる」
とは
「リアスプロケットのギア歯一枚分ギア比を上げても同じトルクで同じケイデンスが踏める」
ということになる。
では、早速良くありそうなシチュエーション、体重60kgの人が時速40km/h程度で走行したとき、「ギア一枚軽くなる」とはどういうことなのか検証してみよう。
計算によると、
フロント52、リア15でケイデンス90rpmのとき、速度は39.5km/hとなる。
フロント52、リア14でケイデンス90rpmのとき、速度は42.3km/hとなる。
次に、体重60kgの人がロードレーサーで無風単独ド平坦で走る場合、
手元のアプリによると、
39.5km/hでは、300W必要
42.3km/hでは、350W必要
となる。(※上記通り、Cdaは標準的な値と言われる0.32で試算してます。)
つまり、ギア1枚分軽くなるためには・・・恐ろしいことに50W相当のパワー軽減が必要ということだ。
そんなの無理やろwwwwwww
と、なりそうなものだが、意外と不可能ではない。
How Much Faster Is A Modern Road Bike & Kit? | Retro Vs Modern Wind Tunnel Tested
こちらの動画の結果だが、レトロなジャージに比べて現在のエアロジャージにすることで、45km/hの際、53Wもの軽減効果があるのだ。
つまり、40km/h程度で走行するテストにおいて、レトロで空気抵抗の大きいジャージからエアロジャージに着替えることで、およそ「ギア一枚軽くなる」ということが言える。
また、みんな大好きVENGEに乗り換えるとどうか?
恐るべきことに、キャノンデール・スーパーシックスエボ ハイモッドと比べて33Wの低減を実現している。
ライダーの体重等、設定が異なるので細かい検証は出来ないが、これに近いWになるようにCda値(2.0)を設定してみると
39.5km/hでは、200W必要
42.3km/hでは、232W必要
と、なるため、エアロバイクではないトラディショナルな形状のロードバイクからVENGEに乗り換えることでも、およそ「ギア一枚分軽くなる」と言えるのだ。
次に、別のシチュエーションを想定してみよう。
体重60kgの人が10%の登坂を5.0W/kg程度で走行したとき、「ギア一枚分軽くなる」とはどういうことなのか?
再び計算してみると、
フロント36、リア28でケイデンス90rpmのとき、速度は14.7km/hとなる。
フロント36、リア27でケイデンス90rpmのとき、速度は15.2km/hとなる。
そして、10%の登坂をその速度で登るためには、
14.7km/hでは、304W必要
15.2km/hでは、315W必要
(スクショ略)
となる。
つまり、ド平坦とは違い、たったの11W低減するだけで良いのだ。
これは、ギア比の変化の割合が全く違うから当たり前なのだが、まぁ、「ギア一枚」は「ギア一枚」なのだから仕方がない。
ちなみに、シミュレーションでは8kgのバイクで計算しているのだが、この条件下において、バイクを軽量化することで0.5km/hスピードアップするためには、5.5kgのバイクにする必要がある。
つまり、にんにんさんが通常のバイクから
このスーパー軽量バイクに乗り換えると、およそ「ギア一枚軽くなる」のだ。
または、11Wということだから、ヒルクライムにおいては、リアディレイラーのプーリーをビッグプーリーにしたり、タイヤを低摩擦のものに変えて空気圧を適正化したり、ベアリングを低抵抗のものにすることで、合計して「ギア一枚分軽くする」ことは不可能ではないと考えられる。
こうして検証してみると、レビュアーの言う、「ギア一枚分軽くなる」という表現があながち感覚論による夢想などではないことが分かってしまったと同時に、そのハードルは果てしなく高く、ちょっとパーツを一つ変えた程度では超えられない壁ということも分かってしまった。
しかし、レビューというのは概してそういうものだ。少し誇張するくらいのほうがやはり伝わるし、何より読んでいて楽しい。
すべてを数値化したレビューにはもちろん大きな価値があるが、プラシーボを含んだ人間の感覚を主とする味わい深いレビューが、やはり最高なのだ。
最後に、自転車にお金を注ぎ込みすぎて金欠の諸君にメチャクチャおいしくて安いスイーツのご紹介だ。
サイゼリヤの「プリンとメリンガータの盛合せ」399円(税込)
神がお創りになったとしか思えない組み合わせ。
まず、プリンはスプーンを入れると赤ちゃんのほっぺのように心地の良い弾力で反発しながらもスムーズにそれを受け入れる。値段からはゼラチンを固めたものかと思いがちだが、口に入れた瞬間、体温で滑らかに溶けていくと同時に、力強くも甘過ぎない甘味がタマゴと乳製品の優しいコクとともに広がる。さらに、適度に香り高いカラメルが完璧なまでのバランスで、「私はプリンである。」と自己主張をしてくる。
このプリンだけでも食べるために旅をするに値するほどの出来なのだが、これにメリンガータが加わる。
メリンガータはサイゼリヤで冬限定のデザート。
フワッとした生クリームをふんだんに使ったアイスケーキだ。
アイスケーキなのに、しっかりと泡立てた生クリームを使っているので、口に入れた瞬間、軽い冷たさを残して美味しさそのものに変貌する。
間に挟まっているのはメレンゲを焼いたものなのだが、これがスポンジやパイでないことこそがメリンガータが最高であることの理由の一つだ。サクサクとした歯ごたえで口の中に幸せを運んだと思ったらすぐにクリームと溶け合い消失していく。
そして、最後に小さなチョコの甘さとカカオの香りが後味としてこのデザートの完成を詠うのだ。
このプリンとメリンガータ、単品で頼むとそれぞれ249円と199円でそもそも激安なのだが、セットにすると399円になる。サイゼリヤは足し算が苦手なのかもしれない。
ドリンクバーのエスプレッソと合わせてどうぞ。
God bless you.
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